2023年5月5日14時42分、石川県能登地方を中心とした地震が発生し、能登半島先端に位置する珠洲市では震度6強を記録しました。
その後も21時58分には震度5強を記録し、活発な地震活動が続いています。
この日で4回緊急地震速報が鳴ったということで、長周期地震動階級は3とされました。
長周期地震動階級とは、地震時の行動難易度や、家具等の移動・転倒などの被害の程度を数値化し、1~4であらわされます。
また珠洲市では土砂崩れや地面が隆起する地殻変動も観測され、今回も珠洲市飯田港で20cmほどコンクリート路面が隆起していることが確認されています。
しかし同様の地震活動が過去に起きたことはなく、詳しい要因は解明されていませんが、複数の要因が絡まり合って発生しているようです。
その中の一つが、「流体の流れ込み」であるようです。今回は流体の流れ込みを含め、過去の能登半島での地震等についても調べてみました。
能登半島周辺の環境、「流体」による地震発生とは?
能登半島の西方沖~北岸沿いの海底には能登半島沖起震断層群とよばれる活断層が断続的に分布しています。
それ以外にも能登半島周辺は全方位断層に囲まれています。
能登半島のように活火山のない地域で観測されるのは珍しいとのことです。
(一番近い活火山は石川県南部の白山、富山県の立山と距離があります。)
活火山がある地域では、地下のマグマ活動によって引き起こされる可能性はあるそうですが、これだけ離れていると、マグマ活動とは結び付かなそうですよね。
しかしながら能登半島の地下には広く『流体』が分布していることがわかってきて、地震を引き起こしている可能性が判明しました。
この流体は、太平洋側から能登半島の地下深くに沈み込むプレートから、長い時間をかけてしみ出て分離上昇した、普通の水みたいなもののようです。
簡単に流体の流れ込みといっても、動きには種類があり、下記のような3種類が考えられるようです。
国土地理院によると、想定される地殻変動のメカニズムとして、
A.通常の地震とは異なる、断層がずれ動く現象が起きた
B. 流体が断層と断層の隙間に入り込んだことにより、断層が押し広げられた
C. 地下に大量の流体(水など)がたまり地盤を押し上げた
これらの可能性があると発表しています。
今回の地震について
冒頭に挙げた2つの地震は震源が10~15キロと非常に浅く、地震波形では「P波」と呼ばれる「初期微動」が計測されていませんでした。
P波は離れた位置で発生した地震の本震「S波」より先に到達するものですので、直下型の地震ということになります。
ちなみにP波は8km/s、S波は3~4km/sですので、P波の半分の速度で到達するのが本震のS波となります。
また震度が小さい余震も含めて、発生した場所は能登半島の先端に密集しています。
このマグニチュード6.5(以下Mとします)という地震は、地下でおおよそ10キロ四方の断層が一気にずれ動いたことになり、日本で群発的に発生する地震でも、非常に大きくまれな地震です。
もし能登半島の沿岸で今回より大きなM7クラスの地震が起きて、海底面まで延びる断層が破壊されたとすると、大きな津波が発生する恐れがあります。
後述しますが、去年6月には珠洲市で震度6弱の揺れを観測した翌日に、震度5強の揺れがあり、今回とよく似ています。
地殻変動は現在もゆるやかに続いていることから、地下で流体が移動していると考えられ、今後も地震活動に警戒が必要となり、地震活動が続く可能性もあります。
今回一番大きな揺れを記録した珠洲市は震源からも近く、P波を検知する緊急地震速報は間に合わない可能性が高いです。
ただ地面からアリが一斉に出てきた という証言もあり、アリがP波を感じて出てきたのではないかと考えられます。
アリの動きで若干早く揺れを予想できそうですが、およそ現実的ではないですね。
いつ地震が来てもおかしくない状況ですので、
・倒れそうなものから離れる、スペースがないなら倒しておく
・いつでも避難できるような準備をしておく
こういったことが求められる状況でしょう。
能登半島の過去の地震活動
Ⅰ.2000年代の大規模な地震
能登半島西側に位置する輪島市、穴水町では2007年3月に震度6強1回と震度5弱3回を計測し、7月にも震度5弱が1回、翌08年1月にも震度5弱が1回発生しています。
とりわけ2007年3月25日の地震はM6.9と大規模なものであり、能登半島全域で震度5弱以上を記録しました。
この時、今回大きな揺れが発生した珠洲市は輪島市、穴水町程大きな揺れを観測しておらず、今回とは別の場所が震源となっていることが想像できます。
Ⅱ.2020年代の大規模な地震
能登半島での大規模な地震が発生が再開したのは2020年頃で、この間の12年間は震度5弱以上の地震は記録されておりませんでした。
能登半島先端に位置する珠洲市では、2021年9月に震度5弱(M5.1)、2022年6月には震度6弱(M5.4)、震度5強(M5.0)となる地震が連日発生しています。
このほか2020年3月には能登半島西部の輪島市や穴水町でも震度5強(M5.5)発生していました。
これらを含めて震度1以上の揺れを観測する地震が頻発し、このうち震度3以上は数十回程度にも及ぶ頻度で記録されています。
震源について一連の地震の震源を再解析した結果から、やや深い場所から次第に浅い場所へと移動していたことに加えて、地殻変動のデータからは範囲が次第に狭くなっていたことが確認されているようです。
今回の地震の震源も10km程度と非常に浅いことから、一連の地震との関連は強そうです。
まとめ
今回の地震で能登半島先端の珠洲市では、震度6強、5強を記録するなど活発な活動が続いています。
地震は震源が10~15キロと非常に浅く、地震波形では「P波」と呼ばれる「初期微動」が計測されていませんでしたので、直下型の地震ということになります。
能登半島の地下深くに沈み込むプレートから、長い時間をかけてしみ出て分離上昇した、流体の流れ込みが原因と考えられます。
発生した場所は能登半島の先端に密集しており、同様の直下型地震がいつ来てもおかしくない状況です。
能登半島の沿岸で今回より大きなM7クラスの地震が起きて、海底面まで延びる断層が破壊された場合、大きな津波が発生する恐れがあります。